わが国のあり方を考える発表会・意見交換会


〔三次元物理探査船〕複数隻建造を!

 
プログラム
趣旨説明 清原淳平 (財)協和協会専務理事
動画&スライドショー・解説 吉川明伸 資源エネルギー庁担当総括課長補佐
詳細解説 芦田 譲 京都大学名誉教授 (財)協和協会理事、
NPO法人 環境・エネルギー・農林業ネットワーク理事長
総括と閉会の辞 半田晴久 (財)協和協会理事長
司会・議事進行 重田典子 (財)協和協会事務局総務課長

▲名前をクリックすると該当箇所へジャンプします。


 日時:平成22年11月26日(金) 午後6:30〜8:30
 会場:星陵会館ホール(東京都千代田区永田町2-16-2)


全景

テーマとスローガンを掲げた壇上の模様。向かって右側から、芦田譲京都大学名誉教授。主催団体(財)協和協会の半田晴久理事長。資源エネルギー庁から、吉川明伸担当総括課長。清原淳平専務理事は、舞台右手演台にて、趣旨説明中。


<趣旨説明> 清原淳平 専務理事

清原淳平 専務理事  当財団が、この「物理探査船」問題を知ったのは、平成15年に、月例講話会にて、芦田譲京大大学院教授(当時)より、「世界には、百数十隻の物理探査船があり、アジアで中国12隻、韓国4隻を保有するのに、わが日本には1隻もない」との話を聞き、驚いて「新エネルギー委員会」で採り上げ、政府宛に『諸外国に比べ、極度に遅れている海底資源探査専用船を、早急に建造・整備いただきたき要請』書を起案した。
 そして、平成16年1月13日、総理官邸に時の福田康夫内閣官房長官をお訪ねし、数本の要請書とともに、この要請書を御説明の上、提出した。福田官房長官はすぐ事の重要性を認識され、補正予算で104億円の研究調査費を省庁に付けられた。その後、当財団が研究すると、この〔三次元物理探査船〕を造るには200億円以上かかることが分かったので、翌平成17年1月7日、総理官邸に時の細田博之内閣官房長官を訪ね、『国家の将来にとって喫緊の課題については、内閣府に特別予算枠を設け執行いただきたき要請』書の中に、〔三次元物理探査船〕の項目を設け、御説明の上、提出した。細田官房長官も重要性を認識され、省庁に247億円の予算を付けて下さった。
 しかし、その海底調査の結果を平成21年(2009年)5月までに国連へ提出しなければならないという時間的制約があったため、国はノルウェー船をチャーターして操作方法を学び、結局は、ノルウェー船を買い取って装備を施し、平成20年(2008年)2月11日千葉県船橋港で完成式典をし、翌日には、あわただしく、調査のため出航した。
 この〔三次元物理探査船〕は、なぜそれほど重要か? それは、海底に眠る資源探査の重要性は言うまでもなく、海底断層を知ることは地震予知につながり、また、排他的経済水域(EEZ)は200海里だが、大陸棚がそれ以上あることを沿岸国が証明すれば、200海里を超えてEEZが認められるので、それは領海問題であり安全保障問題だからである。

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重田典子課長

司会・議事進行
重田典子総務課長

司会・議事進行を務める(財)協和協会の重田典子総務課長。 平成15年〜17年の要請書作成当時、「新エネルギー委員会」に事務局スタッフとして関与・サポートした。

探査船

3次元物理探査船「資源」
平成20年2月に導入。日本が保有する唯一の3次元物理探査船「資源」の全容。

報道関係

テレビ・新聞などの報道も
この日は、国会も終盤を迎え報道も忙しい時期であったのに、新聞記者の方やテレビ関係も撮影に来て下さった。なお、「世界日報」がこの講演の内容を詳しく報道して下さった(下記参照)。また、御参会者も老若男女のお姿が写っており、主催者として、うれしい限りである。

後方から参会者

熱心に耳を傾けて下さった
参会者の皆様方

尖閣列島周辺海域での中国との問題がクローズアップされている最中ということもあって、注目度は非常に高く、ホールを埋め尽くすように、多くの方々が来場してくださった。この問題に対する国民の関心の高さがうかがえる光景である。


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<動画&スライドショー・解説> 吉川明伸 担当総括課長補佐

吉川明伸総括課長補佐  三次元物理探査船「資源」の概要と運行状況について、お話をいただいた。特に、三次元物理探査をどのように行っているのか、動画を交えて詳しくご解説いただいたので、とてもよく理解できた。解説の要旨は以下の通り。
●目的:物理探査船「資源」の目的は、我が国周辺海域に存在する石油・天然ガス資源の詳細なデータを効率的・機動的に収集することにある。有望な海域が見つかれば、試掘を行って民間に情報提供していく。
●実績:現在までに、約7,800平方kmの三次元物理探査を実施している。探査海域は、三陸沖、佐渡沖、宮崎沖、沖縄沖等である。
●物理探査とは:エアガンで音波を発生させ、海底面・地層の境界面からの反射波を、ストリーマーケーブルで受信後、解析して、地下構造を立体的に把握する方法。
●2次元と3次元との違い:2次元探査では直下の断面地質情報しか得られない。3次元探査では、複数のストリーマーケーブルで同時受信を行い、3次元の地質情報を得る。「資源」では長さ5〜6qのストリーマーケーブルを10本使用。幅は約1qにも及ぶ。これにより、資源存在海域発見の確率は飛躍的に高まっている。

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<詳細解説> 芦田譲 京都大学名誉教授

芦田譲京都大学名誉教授  芦田譲先生は、日本の三次元物理探査船誕生の立役者のお一人だ。以前より、その必要性を訴えられ、要請書(平成16年1月13日)の作成にもご尽力を下さった。「三次元物理探査船は1隻ではとても足りない!」と力説されたのが、印象的だった。要旨は以下の通り。
●日本周辺海域の石炭・天然ガス資源:1億5千万年前の湖に植物が堆積したものが、現在の日本の石炭・天然ガス資源の元だ。常磐沖から三陸沖、夕張、サハリンとつづくラインが、それにあたる。これらも海底探査により明らかになったことだ。
●大陸棚限界の拡大域審査:平成21年5月に国連に大陸棚限界の拡大域について科学的根拠に基づいた日本の主張を国連に提出。この調査にも探査船は貢献している。
●3次元物理探査の必要性:海底石油の試掘の成功率は、30年前14%が現在は75%になっている。これは「3次元」の威力であり、石油業界では3次元探査は常識となっている。
●豊富な資源がある日本領海:メタンハイドレートやマンガン団塊、コバルトリッチクラスト、熱水鉱床など、日本近海には豊富な資源が眠っている。

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福田康夫元総理よりのメッセージ

 本日は、財団法人協和協会主催の『わが国のあり方を考える発表会・意見交換会』の開催にあたり、私のメッセージをお届けさせていただきます。 
 資源の乏しいわが国にとって、資源の確保は、安全保障の面からも大変重要な課題です。一方で、わが国を取り囲む広大な周辺海域には、豊富な地下資源が眠っているとも言われており、自由民主党にあって、大陸棚調査推進議員連盟の会長として、政府の大陸棚調査を推進する役割を果たしてきました。また、私が内閣総理大臣を務めていた平成20年2月に探査船「資源」を導入し、「資源」による基礎調査を政府としても進めてまいりました。こうしたわが国固有の地下資源をいかに開発し、活用していくかは、国家の重要な課題であります。
  こうした中で、多くの皆さんが集い、こうした国家的な課題について共有し、議論する場が設けられることは、大変意義深いことであると考えております。本日のこの会が、活発な意見交換の場となることを祈念申し上げて、私のご挨拶とさせていただきます。
 平成22年11月26日

                     元内閣総理大臣、衆議院議員 福 田 康 夫 


三次元物理探査船導入にご尽力いただいた先生方。

福田康夫元総理

福田康夫元総理
平成16年1月13日、総理官邸に当時の福田康夫内閣官房長官をお訪ねし、要請書を御説明の上、提出。事の重要性をすぐ御認識下さり、104億円の研究調査費を省庁へ付けられた。

細田博之前幹事長

細田博之 前自由民主党幹事長
当団体では、翌平成17年1月7日、官邸に細田博之官房長官を訪ね、探査船は200億円以上かかると申し上げた。細田先生は247億円を計上し、1隻実現した。


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<総括と閉会の辞> 半田晴久 理事長

半田晴久理事長  日本は海洋法整備が遅れている。一方、中国は「海洋権益を守る」ことを国策として動いている。この問題は、安全保障、国境画定、海洋権益…つまり国益に直結した問題だ。だからこそ3次元物理探査船による調査は重要である。ぜひとも複数隻建造の政治的決断を望みたい、と締めくくられた。

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上田稔前理事長

〔物理探査船〕要請書の動機を作った上田稔前理事長
この〔三次元物理探査船〕の件は、平成15年春、当時の上田稔理事長(元環境庁長官)が、関西方面で芦田譲京大教授の講演を聞いたことが切っ掛けである。いま病気療養中の上田稔前理事長に心から感謝申し上げる。なお、この件の要請書づくりは当団体「新エネルギー委員会」が中心となったので、以下に歴代委員長を掲記した。

矢崎敦生氏

新エネルギー委員長
初代 矢崎敦生氏

東京帝国大学工学部卒、工学博士。人事院事務官、運輸技官。船舶技術研究所推進性能部推進研究室長、海洋環境技術研究所長、(財)日本造船振興財団常務理事。日本造船研究協会技術顧問。(財)協和協会評議員。

中村哲哉氏

新エネルギー委員長
第2代 中村哲哉氏

東京工業大学機械工学科卒。科学技術庁技術士審議会専門委員、同技術士国家試験委員。日本技術士会理事兼機械部長。
中村哲哉技術士事務所所長。(財)協和協会評議員。

中島稔氏

新エネルギー委員長
第3代(現)中島稔氏

大阪工業大学機械工学科卒。工学博士。ナカシマプロペラ(株)入社、常務取締役、代表取締役副社長。同副会長。ナカシマホールディングス(株)副会長。(財)協和協会理事。


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『世界日報』に掲載された記事(平成22年11月28日)

▼クリックするとより高画質なデータを表示します。 世界日報記事

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