教育部会作成要請書第43号、政府宛提出要請書通算137本目、平成24年5月11日提出
諸外国に比べ著しい学力低下を阻止するため
保育・幼児・小・中・高・大学・大学院等
保育はじめ教育制度の抜本的改革を提唱する

【要請の趣旨】

 わが国の教育は、国際比較において2000年位までは、1、2を争う高水準にあったが、その後の統計では、年々低下し、いまでは20番台後半という深刻な事態に陥っている。  当団体は、昭和55年以来、教育問題だけでも40本を越す要請書を政府に提出して来た。そのほとんどは、教育の質的改革についてであったが、学力の国際比較における年々の低下の原因を検討した結果、ことは質的改革に留まらず、「教育制度の」の改革が必要であるとの認識に達し、平成21年6月、時の政府に『学校教育制度改革の一環として、6・3・3・制を見直す必要性の論拠を提供し、ご検討いただきたき要請』書を、提出した。
 そして、教育部会でその後も「教育制度改革」の検討を進めた結果、単に6・3・3・制の改革に留まらず、わが国の教育を再興するためには、幼少期から、小学校、中学校、高等学校、大学、大学院にいたるまで、教育制度全体を、全面的に見直す必要があるとの結論に達したので、ここに、本要請書を提出する次第である。
 その詳細は、後記「要請の理由」をお読みいただきたいが、以下に、その要点を列記する。
1、戦後の教育制度体系も、戦後65年余を経て、国際的・国内的にみて、時勢に合わなくなっており、これを見直すべき必要性について。
2、妊娠中から満1歳児までは、教育制度とは別に厚労省で対処するとして、女性が一生に産む子供数が1.3という低水準の少子化への対策もあり、満1歳児〜2歳児〜4歳児については、国家が、それぞれその費用と施設につき、抜本的に対策を講ずべきこと。
3、テレビ・ゲーム機などにより、5歳児と6歳児の知能発達段階があまり変わらないとの研究から、小学校入学を、現行の満6歳児から、1年早めて、満5歳児をもって入学とする。
4、それに伴い、現行の小学6年生たる11歳児が、昔と比べ身長・体重・知能ともに向上している現状から、小学校期間を、満5歳児から10歳児までの6年間とする。
5、中学生は、したがって満11歳入学とし、さらに、この時期に社会教養的な知識を付与させるため、中学生期を、現行の3年制から4年制に変更する。
6、高等学校は、現行どおり、3年制でよいかが問題となる。高等学校は、一般高校のほか、定時制高校もあり、また、すでに、工業高校や商業高校をはじめ、近年では、美術工芸高等学校、船員養成高等学校、建築設計高等学校、陶芸高等学校、調理高等学校、美容高等学校、等々、専門分野を目指す高等学校が出来ており、その種類は80種類にも及ぶと言われる。
 つまり、現代では、戦後教育制度の開始時代に想定していた、全日制高校と定時制高校といった認識を超えて、高等学校進学の段階で、すでに、自分の将来の職業まで考えて、その進学先を考えている現状なので、国家は、この趨勢に従い、各種の専門的な高等学校の存在を認識し、この年齢の子供自身に、自分は、将来、どういう職業につきたいかの選択を含めて、その生徒各自の選択に任せてよいのではないか、と考える。
 また、上述したように、高等学校がかなり専門化していることから、理工系や技術系の高等学校の中には、4年制を望む学校もある。高等学校の公費負担・義務教育化については、後述「要請の理由」の中で、その疑問について述べることとする。
7、大学については、少子化に対して、短大も含め大学が余りに多くなっているため、経済的に成り立たない学校が増えている問題もあるが、4年制大学において、大学教授の中には、特に理工系・技術系大学をはじめとして、4年制のうち最初の2年間を教養課程とするため、技術的・専門的なことを、あと2年間で教えることはむずかしい、との声があり、そのため、教養的なことは高等学校時代に済ませて来てほしいとか、それが出来なければ、大学を5年制にしてほしい、との声も挙がっている。
8、大学院についても、先進諸国では、有名な大学院を出なければ(また、博士号を取得しなければ)、よい企業に就職できない傾向が強い。これに対して、日本では、一般的には、大学は出たけれど就職先がないから大学院に行くといった傾向があり、企業側からも、大学、大学院を出ても、実際の役には立たず、社内で鍛えなおさなければならない、といった声が挙がっている。
 先進諸国の大学・大学院は、その期間に猛烈な勉強をするのが普通で、そうしなければ、卒業できない。これに対して、日本は、名のある大学を受験して入学するのは大変だが、一旦、入学すれば、それほど勉強しなくとも、上手く単位さえとれば、それほど苦労なく、卒業できるというのが一般であり、社会へ出てすぐ役立つ学力がない。こうした状態を改革しなければ、諸外国の学力に対抗することが出来ず、すでに、かなりの遅れをとっている。
9、なお、こうして、幼少から小・中・高・大学・大学院と大改革する必要があるが、それには、制度改革に伴う費用(予算)が必要になる。衆知のごとく、わが国は、財政・経済面で逼迫した状態にあるので、最後に、この面をどうすればよういかにつき、提言する。

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