医療福祉部会作成要請書第9号、政府宛提出要請書通算135本目、平成22年3月17日提出 |
当面する医療危機に対し、まず、早急に対処すべき医療提供体制についての要請 |
【要請の趣旨】
たらいまわしにされた妊婦の死亡、公的・私的病院の経営破綻、医師の過労死、コンビニ受診(外来診療をしていない休日や夜間の時間帯に、救急外来を受診される緊急性のない軽症患者の行動のこと)、減少しない医療過誤、救急車をタクシー代わりに使う、などの諸現象から、医療の崩壊が叫ばれています。多少は過剰報道に振り回されている面があるとしても、一面の真実であることは否定できず、その根拠には、供給を上回る需要が顕在化してきたことがあるのでは、と考えざるを得ません。
高度経済成長が止まり、財政状況が逼迫する中、医療費抑制の圧力はかなり長期にわたり続いてきました。しかし、効率化には限度があり、入院期間を短縮すると同時に、在宅支援などの方策が必須でした。医師数を増やさないのなら、それを補う手当が必要だったはずです。
現時点において、早急にこれに対応するために、ここに幾つかの提言をしたい、と考えます。
まず、医療職の業務範囲の見直しは必然で、喫緊の課題です。医療の進歩に伴い、医療行為からはずす部分を明確化することにより、福祉職を含む、多くの人が、患者にかかわることを容易にし、また、医療関係者の負担を軽減することが可能となります。慎重な安全確保対策が前提となりますが、患者や、介護する家族にとって何よりの光明となります。
次に、医療関係職種の役割を見直し、特に境界領域の扱いのルールの見直しを急ぎ、現状の過大な多忙状況を早期に解消することが求められています。例えば、NP(上級実践看護師)の導入は、国際的にも多くの国で検討、実施されており、必然の成り行きです。我が国においても、その道筋をどうするのかを、早急に議論すべきであり、これにより、医師の負担は大幅に軽減します。
医師不足が問題となり、その対策について、医学部定員の増加や、臨床研修制度の見直しなどが論議されています。しかし、それと同時にというかそれ以上に、給与体系の変更や、就業形態の柔軟化などにより、病院や、行政が、必要なところに医師が充足するように誘導する努力をすべきです。さらに、科別の定員制や、地域別の定員制などの規制強化も検討すべきです。
我々は、同時に、臨床研修において予防や福祉を包括した総合医療を重視し、家庭医の役割を評価し、地域に定着させていくことを提言します。これも先進各国が導入しており、患者にとって有益な専門性です。
また、医療スタッフと、患者および家族の間の調整を行う職種の位置づけも重要です。名称は、仮に、「医療福祉コーディネーター」としますが、病気や医療と、それに伴い発生する問題などの説明を尽くし、患者・家族の納得の上での選択の援助をおこない、患者・家族の不安・不満の解決をする役割を担うものです。なお、これらが働く場の具体的な位置づけ、法的整備について、早急に検討されるべきです。