安全保障部会作成要請書31号 政府宛提出要請書通算129本目、平成21年6月1日提出
周辺の核ミサイル保有諸国から防衛するため、
核抑止力として、「持ち込ませず」を撤去する政策に
転じていただきたき要請

【要請の趣旨】

わが国は、第2次世界大戦で、軍人・軍属230万人と民間人80万人、合計310万人が死亡したという悲しい現実、そして、世界唯一の原爆被災国であること、また、戦後は、その体験を踏まえて、平和国家としての再生を念願している日本国の方針から、これまで、わが国は、「核を、作らず、持たず、持ち込ませず」という、いわゆる「非核三原則」を宣言してきた。
 しかし、ここ数十年、日本を取り巻く国際情勢・軍事情勢は大きく変化している。特に、東アジアの軍事情勢は、激変していると言ってよい。すなわち、東北方では、ソ連時代から核弾頭ミサイルがわが国に向けて配備されており、ソ連が崩壊しロシアとなって、緊張度は減退したとはいえ、核弾頭ミサイルが、台湾向けばかりではなく、日本へ向けても数十発、配備されていると言われている。それに加え、北朝鮮までが、平成18年に、ミサイル7発ほどを連続発射した上、さらに、地下核実験に成功したと宣言した。以前から、6ヵ国協議が断続的に開かれているが、現時点で、北朝鮮の核放棄は明確ではない。
 すなわち、わが国は、まさに、周囲を核に取り込まれている状態であり、もし、同盟国のアメリカの対応が遅ければ、わが国に核の雨が降る恐れがあり、また、「明日にでも核爆弾を落とすから、すぐ降伏せよ」と言われれば、降伏せざるを得ない現状にある。最近、イージス艦からの迎撃ミサイルで核ミサイルを撃ち落とすことに成功したとの報道はあるが、それが同時に数十発も打ち込まれた場合は、そのすべてを撃ち落とすことは不可能であろう。
 つまり、核攻撃に対して、日本はアメリカ次第であり、アメリカの核抑止力に頼るほかない状態である。日本政府は、この実態を国民によく理解してもらい、核攻撃に取り囲まれたわが国をどう救うか、真剣に考えなければならない。もちろん、外交によりこうした事態を避ける努力をすることは当然だが、相手国の意向で外交努力を超える場合も想定しなければならない。けだし、「安全保障は、最高の国民福祉政策である」からである。
 そこで、当団体では、この問題を検討した結果、核廃絶を世界に訴えるとともに、万一に備え、核抑止力を保持するため、「核を、作らず、持たず、持ち込ませず」のうち、最後の「持ち込ませず」については、政策を変更して、同盟国アメリカの核持ち込みを認めるべきである、と考える。その先例は、遠く米ソ冷戦時代の西ドイツにある。当時、日ドイツは、核廃絶の積極外交を展開する一方、他方、ソ連がヨーロッパを射程範囲に収める核弾頭付中距離ミサイルSS20をソ連領内に配備したのに対し、西ドイツは、自国領内に、アメリカの中距離核ミサイル・パーシングIIの発射基地を誘致し、もし、ソ連が核ミサイルを発射すれば、直ちに、報復の核攻撃を行うとする政策を採った。日本も今こそ、1980年代のこの西ドイツの核抑止政策を見習うべきである。

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