教育部会作成要請書33号、政府宛要請書101本目、平成12年10月16日提出
学校における国旗・国歌の指導の充実を
はかる施策に関する要請

【要請の趣旨】

 平成11年3月、広島県世羅高校の校長自殺を契機に、政府は「日の丸」「君が代」の法的根拠を理由とする反対運動と、それに伴う教育現場の混乱に対処するため『国旗・国歌に関する法律』(以下、「国旗・国歌法」と略称する)の制定に踏み切りました。同年6月、閣議決定されて国会へ提出されて以降、衆・参両院において、内閣委員会・特別委員会等で審議を行なうとともに、中央・地方公聴会、参考人質疑を経て、8月9日、参議院を通過し、同月13日、公布・施行されました。
 明治維新以降、今日まで、「日の丸」「君が代」が慣習法として広く国民の間に親しまれてきており、国際社会もこれを認めてきました。二千年紀を前に改めて、国旗・国歌を法律に定め、国としてのかたちを整えた意義は、極めて大きいと思います。さらに、ますます交流が活発化する国際社会にあって、国旗・国歌へのマナー、エチケットが重視されてきています。こうした中で、わが国の青少年が、“無意図的に”非礼を行なうことのないようにしなければなりません。学習指導要領も、こうした立場から、「指導するものとする」としています。
 しかるに、敗戦の反動と占領政策によって、一部教職員団体は、今日に至るまで「日の丸」「君が代」を軍国主義のシンボルとして、学校から締め出す運動を展開しています。さらに、「平和教育」の名において、「日の丸」「君が代」が、アジア侵略と支配の中で果たした役割を“教化”し続け、歪んだ歴史認識を児童・生徒に植え付けてきました。その結果として、一部の子どもたちが、「日の丸」「君が代」に嫌悪の念を抱き、式典での起立拒否、斉唱拒否などの行動にでました。法案審議の経過で、「児童・生徒の内心」に立ち入る指導の是非が問題となりましたが、これは本来、教育問題としては、子どもたちが何故嫌悪の念を抱くに至ったか、が問われなくてはならない問題です。言うまでもなく、学習指導要領はそのようには定めてはいません。「内心に立ち入り禁止」を叫ぶ教職員団体の目的は、彼らの「平和教育」の成果を温存するためのものです。
 法制定後、反対してきた教職員団体は、「法的根拠」を反対の理由とすることができず、専ら国会審議での政府答弁〔(1)法制定を理由に強制しない。(2)学校に対しては従来どおりの指導を行なう。(3)児童・生徒の内心に立ち入った指導は行わない。〕要約すれば、「強制しない」を唯一の論拠とし、学校を法制定以前の状態に保つことを目的として、国旗・国歌法の形骸化を図ってくることは明らかです。
 今後、法制定という新たな段階を迎えて、各都道府県教育委員会と教職員団体との間に、「交渉=話し合い」が行われることが想定されます。文部省が、昨年4月中旬おこなった国旗掲揚・国歌斉唱の全国調査の結果が、9月公表されました。全体としては、実施率は改善されてきていますが、地域的に偏りがあり、校種間にも格差があります。概ね、こうした現象は、都道府県教育委員会と教職員団体との交渉の歴史的経緯、混乱回避を口実とする癒着の構造を示しています。文部省は、公教育の使命の基本に立ち返って、法令の厳正な執行を、各都道府県教育委員会が行なうよう、指導していただきたいと思います。
 以上、国旗・国歌法制定に伴い、学校現場に、「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱が定着するよう、以下の諸項目につき、施策の充実を要請いたします。

【要請事項】

1、政府は、まず、この国旗・国歌法の意義が、教師によって、児童・生徒に正しく理解されるよう、その指導の徹底・強化に務めていただきたい。
2、政府は、この際、教職員に対し、その服務に関して、地方公務員法や学校教育法など、の法規、学習指導要領、それに基づく条例などがあり、これに服する義務があることを指導・周知・徹底していただきたい。また、宣誓書に署名した場合は、それに、拘束される義務があることも、徹底させていただきたい。
3、これに反し、教職員が、国旗を掲揚せず、国歌を斉唱しなかったり、児童・生徒にこの法律に反対するような教育・指導をした場合には、上記の法律・政令・条例などに基づき、厳正なる処罰をもって臨んでいただきたい。もし、この際、妥協やルーズな対処をすれば、それは、かれらの「国旗・国歌法」を貶める意図を助長することになり、将来に悪い前例や禍根を残すことになりますので、行政府ならびに司法府は厳正なる対処をされるよう要請する次第であります。

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