科学技術部会作成要請書21号、政府宛要請書通算92本目、平成11年6月8日提出
海域油汚染災害発生時の対応をめぐる混乱防止と
有効な資機材整備のための抜本的対策に関する要請

【要請の趣旨】

当団体におきましては、平成5年度に「油タンカー等による海上流出事故に対して災害を最小限に抑えるための対策に関する要請」書を、平成7年度には「『海上流出油防除技術研究所』(仮称)を国の機関として設置していただきたき要請」書を、時の内閣総理大臣および所管の各大臣に御説明のうえお手渡しをし、早急な対策をお願いいたしましたが、残念ながらそれらが実行に移されないうちに、平成9年1月、ロシア・タンカー「ナホトカ号」の沈没による日本海への油流出事故、さらに、同年7月2日には、東京湾の中之瀬航路におけるタンカー「ダイヤモンドグレース号」の座礁による油流出事故が発生し、これらはいずれも、わが国の海洋および沿岸を広範囲に汚染し、その被害は極めて大きいものがありました。
 その原因は、もちろん、事故を起こした船舶にあるとしても、沿岸汚染など事故の被害の拡大は、こうした事故に対するわが国の現行体制や資機材の整備に問題があったことも現実であります。すなわち、例えば、わが国のオイルフェンス、油回収装置、油処理剤、油吸着材、液体油ゲル化剤、粉末油ゲル化剤等の資機材は、総じて、平穏な自然条件下では役に立ちますが、荒天時などに起こった実際の事故時には、役に立たなかった場合が多いといわれております。
 こうした事態を繰り返さないため、わが国は、OPRC条約の発行を迎え、国際協力の実を挙げるためにも、この際、早急に、流出油防除体制の見直しならびに資機材の整備に、取りかかっていただきたく、要請する次第であります。
 そして、まず、流出油防除体制については、油防除戦力の中核体と位置付けられている「海上災害防止センター」の充実を図る必要がありますが、そのためには、先般、総理府に新設された危機管理対策室が中心となり、これに、運輸省、通商産業省、建設省、農林水産省、自治省、環境庁などの関係省庁による協議機関を早急に設置して対策を練り、また、同センターには、各省庁からの人員・資金だけでなく、関係業界からも人員・資金を導入して、この「海上災害防止センター」の活動の活性化を図っていただきたい。
 また、資機材の整備については、現行の形式承認制とその保有義務付け制を廃止し、外国製品の積極的使用、ならびに国産品の性能向上を図り、もって、官民双方の流出油処理能力が、事故時の現場の要求に合致できるよう、抜本的見直しに早急に取り組んでいただきたい。
 さらに、事故発生時における防除体制の立ち上がりの混乱を防止し、各方面の流出油処理戦力の結集と、指揮命令系統の一元化を図るため、「油汚染災害発生時の現地緊急対策本部設置法(仮称)」を制定していただきたく、以上の諸点につき、要請する次第であります。

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