医療福祉部会作成要請書3号、政府宛要請書通算81本目、平成11年6月8日提出
病院経営管理職・地域福祉管理職養成の
ための教育体制の整備に関する要請

【要請の趣旨】

最近の医療を取り巻く環境は、ますます厳しさを増し、毎年百余の病院が閉院・閉鎖に追い込まれている。これは、年余にわたる医療費抑制策や国民の大病院志向などによるものであるが、病院の経営管理の専門職が教育・養成されていないことも重要な原因となっている。今後の病院運営には、ますます高度な経営管理の知識や素養が必要であり、もはや、医学教育のみを受けた医師が病院の経営を行うことは不可能に近い、と言っても過言ではない。
一方、急速な高齢化の進展の中で、要介護高齢者等の処遇のあり方が、大きな問題となっており、新たに介護保険制度が導入されようとしている。この制度を運用するためには、日常生活の動作・能力等を的確に評価し、適切な介護サービスを実施するための専門的な調整・管理業務、すなわち、ケアマネージメントを担う専門職が必要となる。すでに、医師や看護婦、あるいはケースワーカー等の短期間の講習会などで対応されつつあるが、本来は、大学等における教育制度において養成されるべきものである。
これらの病院経営管理あるいは地域の福祉管理に関する専門職の養成は、欧米先進諸国ではヘルス・サービス・マネージメントの領域の大学・大学院において広く行われている。しかしながら、わが国においては、この領域の教育体制が極めて遅れており、早急に、社会医学、社会福祉、経営、経済、法学等に関連する大学、および大学院において、この領域の教育体制の整備が必要であると考える。
 そこで、当団体は、以下の事項について要請する。

1、今後の大学および大学院教育において、保健・医療・福祉領域の管理または経営(マネージメント)に関する学問領域の重要性を踏まえ、それを、今後の大学制度の体系の中に適切に位置付けていただきたいこと。
2、この領域に関係する専門家による検討会を設置し、医療保険改革等の進行で、差し迫った課題となっている病院経営管理の専門職の養成のため、教育体制のあり方やカリキュラムについて、具体的な検討をしていただきたいこと。
3、病院や地域に就業している者が専門教育を受けるに当たって、教育の形態や実習・演習の実施、あるいは単位の取得などについて、従来の制度にとらわれない柔軟な対応をしていただきたいこと。
4、この領域の学科または課程の新設・増設に当たっては、現場の実務経験者による教育が極めて有効であることを踏まえて、教員の要件や実習施設の確保について、特段の配慮をしていただきたいこと。

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