科学技術部会作成要請書12本目、政府宛提出要請書62本目、平成5年11月26日提出
油タンカー等による海上油流出事故に対して災害を最小限に抑えるための対策に関する要請

【要請の趣旨】

わが国の沿岸海域を航行し、あるいは狭隘水路及び港に出入する油タンカー等からの海上への大規模油流出は広い海域や沿岸を汚染し、環境、生命財産及び社会活動に計り知れない損害を与えます。
 最近の諸外国及びわが国における油流出事故の経験に照らし、また防除体制及び技術の急速な進歩を考えますと、事故の発生を未然に防止し、また発生した事故の災害規模を極力限定するための防除体制の見直しと、近代化に関する対策を早急に実施していただきたく、ここに要請申し上げます。
 なお、ここに述べる対策は、国外における油流出に関して、国際的な協力を求められた際の強力な対応手段をも提供するものであります。
 項目を挙げますと、
一、要請の背景、特に海上油流出事故とわが国の特殊性
二、油流出事故を未然に防止するための対策
 (1)わが国が輸入する油を運ぶすべての油タンカーに対し、ポートステートコントロールによる検査の実施
 (2)ナビゲーションレコーダーの開発と油タンカーヘの設置の義務付け
 (3)衝突・座礁防止装置の開発改良、すなわち船舶識別と船舶動態を電波エコー発信するトランスポンダー、電波警笛、ソナーを含む装置の開発と改良
 (4)狭隘水路に沿岸レーダーを設置し、これにショーダービジョン機能を開発の上、設備する
三、油流出事故に伴う災害の規模を極力限定するための対策
 (1)流出油の拡散防止及び回収用資機材の開発
  (ア)油の存在・範囲を識別し得る薬剤(例えば着色剤・感光剤・センサー感応剤等)を含む高性能粒状油吸着材とその利用法の開発
  (イ)海洋環境に無害な高性能油処理剤の開発
  (ウ)ヘリコプターやホバークラフトなど〔以下「ヘリコプターなど」〕で搬入可能な高性能膨張式ダブルスキン・オイルブーム(油吸入とオイルフェンス併用システム)の開発
  (エ)ヘリコプターなどで搬入可能な現場組立式流出油回収機器の開発
  (オ)ヘリコプターなどで搬入し、ヘリコプターからラジオコントロールする無公害型流出油無人焼却装置の開発
 (2)航空機などに搭載して流出油を追跡し、その動態、性状等を観測、予測する技術及び機器の開発
 (3)重点防護海域の予測指定を含む、油汚染防除緊急作業管理手法の開発
 (4)流出油防除作業終結基準の設定
四、流出油処理プラント防災船の建造
 国におかれては、当団体のこの研究を参考に、早急なる御検討、御対策を賜りたくお願い申し上げます。

ページのトップへ 要請書の全文をお読みになるには 要請書一覧へ