教育部会作成要請書第17本目、政府宛提出要請書31本目、昭和62年12月提出
「学校行事」の重要性を認識し学校教育で明確にして頂きたき要請

【要請書全文】


  要 請 の 趣 旨

  一般に、「学校行事」には、儀式的行事、学芸的行事、体育的行事、遠足・旅行的行事、保健・安全的行事、勤労・生産的行事があるとされております。
 ところが、国は、昭和43年の学校教育法施行規則の改正により、「学校行事」という用語さえ削除して、その法的根拠を失わせたため、「学校行事」は教育現場において軽視され、その結果、昨今の児童生徒は、見学・遠足・卒業式などの団体行動において秩序・規律に欠ける見苦しい様相を呈し、また日常生活においても、児童生徒が礼儀をわきまえず、しつけが出来ていないことが、世の嘆きとなり、「教育の在り方」に大きな疑問を投げ掛けております。
 そこで私どもは、下記の理由から、現行の学校教育法施行規則第二章小学校第二節教科第二十四条、ならびに同規則第三章中学校第五十三条の条文の中に、「学校行事」なる文字を挿入し、「学校行事」について法的根拠を設けるよう同施行規則を改正するとともに、小学校学習指導要領ならびに中学校学習指導要領の中に、「学校行事」について、それぞれ一章を設けて事態の改善を図るよう、ここに要請する次第であります。


一、「学校行事」は、戦時中に見られた極端な儀式化の弊害から、戦後は、その反動として、「学校行事」の地位がいちじるしく後退せしめられたと思われるが、「学校行事」の正しい教育的意義や効果を考えるとき、これに正当な地位を認め、法的根拠を与えるべきである。

二、また、「学校行事」の地位の後退は、戦後教育における「児童・生徒の個性・自主性重視」の教育観から、学校側が主導する「学校行事」はこれに反するとして、昭和43年の改正で「学校行事」を法文からはずし、これを「特別活動」の法文の中で処理しようとしたのであるが、この考え方は、教育の本質を見誤ったものである。

三、けだし、「児童・生徒の個性を重視し、自立性を養う」ことと、「規律正しい社会活動・団体行動がとれるようにする」こととは、次元の異なる問題であり、この両者は決して、二律背反するものではない。

四、現行法の下では、これを二律背反として扱っているため、団体行動において規律に欠け、礼儀作法をわきまえず、しつけのできていない児童・生徒を作り出し、世の顰蹙をかっている実情に、思いをいたしていただきたい。

五、これまでの教育は、「個性・自主性の重視」に偏りすぎ、また、それが「自分の勝手に言動することが個性であり、自主性である」かのように誤解されているため、今日の教育荒廃を引き起こしているが、今後「学校行事」の法的地位を明確にすることにより、団体行動・社会活動の場では他人に迷惑をかけない規律が必要であり、また、個人の日常生活においても礼儀・作法・道徳心が大切であることを、児童・生徒に認識せしめるのに大いに役立ち、教育荒廃を是正するための足掛かりとなると考えられる。

六、戦後、入学式・卒業式・運動会などで、国旗を掲げず国歌を歌わない事例が問題になっているが、こうした儀式において、国旗を掲げ国歌を歌うのは、世界の常識であり、わが国のこうしたおかしな事態を是正するためにも、「学校行事」の法的地位を明確にすることが、この際、急がれるべきである。
 以下に、「学校行事」の法的地位を明確にするため、法令改正の個所を明らかにするべく、現行法と改正すべき法令を対比して掲げ、御参考に供する次第である。(以下のアンダーライン部分が追加個所)

A、学校教育法施行規則第二章小学校第二節教科第二十四条一項
(現行)小学校の教育課程は、国語、社会、算数、理科、音楽、図画工作、家庭及び体育の各教科(以下、本節中「各教科」という。)道徳並びに特別活動によって編成するものとする。(二項以下省略)
(改正)小学校の教育課程は、国語、社会、算数、理科、音楽、図画工作、家庭及び体育の各教科(以下、本節中「各教科」という。)道徳及び学校行事、並びに特別活動によって編成するものとする。(二項以下省略)


B、学校教育法施行規則第三章中学枚第五十三条一項
(現行)中学校の教育課程は、必修教科、選択教科、道徳及び特別活動によって編成するものとする。(二項以下省略)
(改正)中学校の教育課程は、必修教科、選択教科、道徳及び学校行事、並びに特別活動によって編成するものとする。(二項以下省略)


C、小学校学習指導要領
(現行)(「学校行事」につき一章なし)
(改正) 「学校行事」について一章を新設する。


D、中学校学習指導要領
(現行)(「学校行事」につき一章なし)
(改正)「学校行事」について一章を新設する。

以上の諸点につき、要請いたす次第であります。

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