教育部会作成要請書第8本目、政府宛提出要請書20本目、昭和59年11月提出
安全保障部会作成要請書第13本目、政府宛提出要請書20本目、昭和59年11月提出
愛国心教育の内容と育成についての要請

【要請書全文】


第一章 要請の概要

一、要請の趣旨

 国家の存立と繁栄は、国民の国を思う心、すなわち愛国心にある。これは古今東西を問わず不変の原理であって、史実の上にも明らかである。したがって、いずれの国も自国の歴史の中に養われてきた精神的・文化的伝統に基づく国民教育を最も重視している。
 同時に、他の国々の精神的・文化的伝統をも理解認識し合って、互いにその特性を重んじ、もって世界の共存共栄を図ることが、真の世界平和建設への道であろう。
 しかして、それは又、「国民による政治」という民主主義的国家・社会に生きる者の義務でもある。
 「愛国心」は、戦争の際にのみ必要とされるものではなく、平素のいかなる時においても、自国を愛し自己の職責を誠実に果たすことによってこそ、国家・社会の健全なる発展に寄与し、さらに世界人類の福祉と向上に役立つものと言うべきである。
 いやしくも独立国家にして自国を愛し、国を守ることについて、国民意識の高揚を図っていない国はない。  しかるに、我が国においては敗戦以来、愛国心教育を軽視する風潮となり、特に学校教育においては、ほとんど顧みられることなく今日に至ったために、青少年が日本国民としての誇りを失い、国を愛する心情や、社会に奉仕する精神が薄れ、教育荒廃の根本原因となり、我が国将来の命運をすら左右する、重大問題となることを、深く憂うるものである。
 ここに、当団体は、まず為政者が率先して、愛国心の高揚に努めると共に、後述のごとく、特に教育基本法、学習指導要領、教科書検定基準等の中に欠如する、愛国心教育の基本を正されるよう、切望するものである。

二、教育の現状

 (一) 一般的事例。
 我が国にあっては古来、家を基本として家族愛・隣人愛・郷土愛等の伝統的教育が大きな特色をなし、それがおのずから美しい徳行、愛国の真情となって結実し、又、戦後の繁栄の大きな底力ともなったと思われる。  しかし、反面、つぎのような現状がある。

  (1) 昭和58年の総理府の「世界青年意識調査」では調査11か国中、
      自国に誇りを持つ者 70%    8位。
      自国に役立ちたい  39.5%   8位。
      国のための自己犠牲 16.3%   最低。

  (2) 国歌「君が代」を歌えぬ児童・生徒や、「日の丸」が国旗であることを知らぬ者さえある。

 (二) 学校教育の現状。
 小学校から大学に至るまで、学校教育の中には、ほとんど愛国的指導が見られぬのみか、むしろ排除され、時には異端視され、わずかに一部の学生・生徒や父母の自発的な動きと、特に勇気ある一部の教師の努力によって、ようやく一筋の光明を見出しているに過ぎない。
 さらにマスコミの中には、故意に愛国心を阻害する報道をするものも少なくない。
 以上の事柄が相乗的に作用して、愛国心教育を大きく妨げている。


三、当面、直ちに着手されたき要点


 (一) 教育基本法・学習指導要領の中に、国歌・国旗その他、日本の伝統に関する事項を補完すること。

 (二) 殉国者はもちろん、国に尽した各方面の人々の顕彰に努め、我らの祖先の美しさ、尊さを知らしめること。

 (三) 政府自ら、近代日本の歩みにつき公正な歴史解説に努め、将来の理想目的を明確にし、国際関係の実状を周知させ、国防の今日的意義を徹底させること。

 (四) 愛国心を傷ける不正有害な教科書を断固として排除し、その使用を停止し、他方、公正な教科書の出版普及を促進すること。

 (五) 教員に対する愛国心教育の研修を実施すると共に、文部省・教育委員会も毅然たる態度をもって、日本国民の国民的教化につき、単なる要望に止まらず、明確な指示をなすこと。
 特に、良識ある校長等管理職を強力に支援すること。

 (六) 義務教育の本旨は、保護者をしてその子弟に、良き国民たるべき基礎教育を受けさせる義務を負わせるものである。したがって、国、学校、父母は一体となって、この義務遂行に当たらなければならない。そのための座談会・研究会・見学会等を組織的かつ活発に行うこと。


第二章 学校教育の現場から見た要望

 我が国の青少年は、学校において正しい愛国心教育を受けないばかりか、自国に対して嫌悪感を抱かせる教材や、自虐的文章に満ちた教科書によって教えられ、いわば、愛国心タブーの風潮の中で育ちつつある。  この現状を早急に打破し、国家の安全と繁栄とを託すべき青少年を育成するためには、つぎの施策を検討・実施することが肝要である。

 (一) 教育基本法の改正。
 昭和22年3月、厳しい占頷下に制定された教育基本法は、主権回後後も検討されることなく今日に至った。独立国日本の国民教育上、是非とも、つぎの諸点につき、補完する必要がある。

  (1) 我が国の歴史・文化・伝統の尊重。

  (2) 家族愛・郷土愛・愛国心の育成。

  (3) 遵法精神の涵養。

  (4) 国旗の掲揚、国歌の斉唱を、国民の祝日、学校行事等に実施する旨の明示。

  (5) 権利にともなう義務意識の賛成。

  (6) 責任感と祖国自衛の精神との涵養。

  (7) 教育基本法中、疑義のある語句の再検討。  教育基本法が教育の目的として掲げる「人格の完成」も、国家を忘れてはあり得ず、当然、教育基本法の改正を速やかに行って、国民教育の基となる基本法たらしむべきである。

 (二) 学習指導要領の改訂。
 前項の教育基本法改正を受け、つぎの諸点について、是非とも実現を図るべきである。

  (1) 現行の国旗の掲揚、国歌の斉唱をすることが「望ましい」を改めて、「すること」と明示すること。

  (2) 家庭での親子・兄弟姉妹の愛情、敬神(仏)崇祖の心情を養成すること。

  (3) 公益のために身をもって奉仕する精神を涵養すること。

  (4) 国防の任を負うに足る強い精神力と体力を養成すること。

  (5) 道徳教育の実施に関する校長の監督・管理を明確・完全たらしむること。
 現行学習指導要領の中で、特に社会・国語・道徳・特別活動(高等学校は特別教育活動)における国民教育への配慮を再検討し、個人の幸福も安全も国家に依存していること。自国を愛する者こそ他国を尊重し、世界人類の発展に寄与し得ることの認識を明確にした学習指導要領とする。

 (三) 教科用図書の内容の公正化と検定問題。
 教科書検定については、事実の正確性、資料の適正につき改善を命ずるにとどまる現行検定に加えて、重要な欠如事項の採用をも指示することが出来るよう、法制上の権限を明確にすべきである。
 現行の小中学校社会科・国語科及び、高等学校社会科の教科書は、国民教育の視点から、戦後の教科書中、最も問題が多い。
 例えば、北方領土の問題には触れずして、沖縄基地の存在にのみ疑問を投げ、戦中・戦後のソ建軍の不信・不法行為に言及せぬごとき偏向的・亡国的表現や、階級闘争的革命思想の普及宣伝に類する文章が随所に存在し、日本及び日本車に関しては、故意に不確定な資料の下に不当な誹諧をしている点が少なくない。それらは皆、検定を通過したものであるが、現行検定基準や、その適用状況の大幅な改善是正を必要とする。
 いやしくも、独立国日本の国民教育を支える教科書の検定は、外国の不当な干渉を排し、客観的で公正な記述がなされるよう、十分な指導性と権威とを持ったものとせねばならぬ。

 (四) 教科書の題材。
 教科書は、児童・生徒の人間形成に直接影響する重要な役目を持つものである。特に小学校児童は、暗誦するほどに繰り返して読むので、教科書の内容や記述の仕方が、その柔軟な精神構造に深く刻みこまれる。
 ところが前述のように、今の教科書には数多くの問題点がある。
 適正な教科書としては、つぎのごとき題材が盛り込まれることを望む。

  (1) 我が国の歴史や伝統に対する正しい理解と誇りを持たせるもの。

  (2) 民族の魂を伝える神話・伝説・民話・古典等、国民的心情を養うもの。

  (3) 家族愛・郷土愛や、郷土・国家の先輩・偉人の伝記や業績等、国民的感動を呼びさます物語。

  (4) 国旗・団歌の由来や意義等、国民の連帯意識を養うもの。

  (5) 勇気・奉仕・献身・犠牲の至情を教え、国家・社会に貢献する国民性を育くむもの。

  (6) 国際的認識と国際的協調の精神を涵養するもの。

  (7) 努めて明るい題材を用い、将来に希望と意欲を持たせるもの。

 (五) 教師の能力向上のための、現職教育の充実。
 「教育は人に在り」、したがって教育現場には、人格・識見・能力・意欲共に優れ、愛国の至情豊かな人材を当てるよう努力すべきである。教師に人を得ない場合には、学校嫌い、登校拒否、校内暴力等の現象が極めて起こりやすい。
 ここにおいて、愛国の至情と祖国防衛に対する正しい認識を養い、教師の資質を高める校内研修の充実が強く求められる。
 特に夏休みなど、長期休業中における研修に重点を置く必要がある。
 校長の強力な指導と、教頭の補佐のもとに、全職員の相互理解を深め、研究テーマを設定して一体となって協力推進してこそ、その目的を達成することが出来るのである。

 (六) 管理職の権限強化と支援。
 校長・教頭が学校の管理運営に当たり、特に愛国心教育の充実を図る場合、往々にして激しい抵抗を受けるため、心身に過重な負担を受けるものである。校長・教頭が強い信念と説得力をもって毅然として、これに立ち向かい得るよう、十分に権限を強化し、かつ、教育行政が理解と強力な支援をすべきである。

 (七) 責任ある広報活動の促進。
 愛国心高揚のために、国家の施策として、適正な広報活動の強化、促進を図られたい。
 民間報道機関のみならず、公的報道機関にさえも、偏向が見られ、反戦・平和の美名の下に特定政党やグループの主張、外国の政略に迷うがごとき報道姿勢のあることは、心ある多数の国民の指摘し憂慮するところであって、社会正義に反し、教育上重大な影響をもたらすものである。
 政府・国会においても速かに、かかる事態を是正し、責任ある広報活動を活発にし、国民の判断を誤らせぬよう切望する。
 首相を初め、行政担当各位は、率先して愛国の灯を高く掲げて頂きたい。
 教職員及び教育関係者のすべては、その灯を見上げて、自信を持って国民教育を推進するであろう。

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