安全保障部会作成要請書第9本目、政府宛提出要請書15本目、昭和58年10月21日提出
レーガン大統領訪日に際し総理に対応していただきたき要請

【要請書全文】

 最近、わが国周辺における軍事情勢は、極めて流動的かつ緊迫の度を加えている。
 すなわち、去る9月1日、大韓航空機がソ連戦闘機によって撃墜された事件は、わが国に隣接するソ連軍備の強大さと、国際条約等を破って何時武力行使に移るか分からないというソ連軍の実体を、如実に示したものである。
 また、ビルマにおける韓国大統領一行に対する爆破事件によって、韓半島の情勢は一段と厳しくなった。
 さらに、イ・イ戦争の推移次第によっては、中東よりの石油海上輸送路が閉塞されるやも知れない状況にある。
 これらによっても明らかのように、何時いかなる不測の事態が発生するかも知れない、という実に容易ならざる情勢にある。
 かかる秋において、わが国の安全保障にとって最も重要なことは、自主的に防衛態勢を整えると共に、米国との固い信頼関係を維持することにある。
 しかるに、わが国の野党・マスコミの多くは、従来より国家防衛のあり方に異論を唱え、歴代政府亦、確固たる防衛政策を進めることを怠り、ために、わが国防態勢に多くの問題点を生ずることになった。
 すなわち、正面兵力の不足はもちろん、警戒監視・情報機能が弱く、法制面不備のため、防衛出動時の物資等の収用ができず、人事、後方支援面においても、有事即応態勢にはほど遠く、かつまた弾薬類の備蓄、主要装備・部品の予備も少ないなど、戦闘継続能力に重大な欠陥を生じている。
 これに加え、社・共党に代表される、自衛隊違憲、非武装中立論に惑わされて、国民一般の防衛意識は、未だ充分とはいえない。
 かかるわが国の防衛姿勢に対し、米国内には、従来、少なからぬ不満と疑惑をもつむきがあり、日・米関係の基盤をも、ゆるがせかねない情況に立ち至ったところ、総理は、今年1月訪米して、わが国は米国と運命共同体である旨強調し、日・米信頼関係の修復改善に、多大の貢献をされた。
 一方、アセアン諸国の中には、わが国の自衛力整備が、軍事大国につながりかねない、との不信と疑惑を表明する国があり、今夏、総理は、自らこれら各国を歴訪して、わが国の真意を説明し、疑惑を解くことに努められた。われわれは、この労を大いに多とするものである。
 幸いにして目下のところ、わが国の経済・治安・政情は、他国に比し、安定しており、科学技術のレベルも高い。これらはいずれも、日・米関係の親密なることが、根底になければならないことは、いうまでもない。
 このような情勢において、レーガン米大統領の訪日を迎えることは、日米両国相互の理解を深め、信頼関係を一段と強固ならしめるうえにおいて、絶好の機会である。  大統領との会談においては、防衛及び経済問題が、主要議題になることは、当然予想される。
 総理におかれては、わが国防衛の実態を充分にふまえた上で、積極的姿勢を堅持して、わが国内外の情勢と、とるべき施策につき、真剣に、卒直かつ隔意なき意見を交換し、もって、わが国安全保障の安泰をはかられたく、ここに要請する。

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