平成29年11月29日(水) |
人工心臓を夢見て、治療に医療機器を初めて導入! |
渥美和彦先生
東京大学名誉教授、
東京大学医学部元教授、鈴鹿医療科学大学元学長
概要
私が人工心臓の研究を志したのは、1960年代後半であった。当時、アメリカ、ドイツなど限られた大学で始められたばかりで、「最先端すぎる」と反対も多かった。医学部だけででも臨床と基礎医学の両方の知識が必要で大変だったが、工学系、産業界、官界の分野を超えた連携というのも、当時は異例のことで、苦労が多かった。そして、70年代にはじめて人工心臓のプロトタイプが完成したが、現在でも人間の体に入れて動く人工心臓は完成をみていない。それには高い壁がある。一つは人工心臓の素材・材料の問題である。高分子材料で人工心臓をつくるが、一般的な材料では血液が凝固してしまう。固まらない素材を開発しなければならなかったが、人工心臓に対する周囲の反応は鈍く、資金調達に苦慮した。もう一つは耐久性だ。心臓は一日に2千〜3千回動くので、いったん体内に入れたら、5年〜10年は最低でも持ってもらわなければ、患者さんの負担が大きい。
人工心臓のようなプロジェクトは夢がある。それには、イメージしやすい目指す理想像を提示しなければならない。今の日本は、すぐに成果を出す研究が盛んにおこなわれているが、まったく新しいことを始めることこそ醍醐味がある。
最後に、私がこうして研究に専念できたのも、妻渥美英子の尽力が欠かせなかった。この場を借りて感謝を述べたい。
●ご案内状(pdf)