平成29年9月28日(木)

北朝鮮、中国・ロシアの動向。

浅海 保先生

浅海 保先生

順天堂大学教授、
読売新聞東京本社元編集局長・副主筆



概要

北朝鮮問題について今、(1)制裁をさらに強める。(2)核容認。(3)米の先制攻撃の3つのシナリオが考えられる。(1)は、米が中国に対してこれ以上の制裁強化を要求すると、中国は米国債を売り、ドルが大暴落し世界的大不況になる。(2)は、米北間で平和協定が結ばれれば、在韓米軍撤退→韓国核武装→核不拡散体制の崩壊となり、アメリカは世界のトップリーダーから転落する。(3)は、トランプの本心だが、腹心の軍人トリオがイラク戦争の失敗を踏まえ慎重になっている。北朝鮮にとっては、核ミサイル開発は国家戦略である。アメリカに届くミサイルが完成すれば対話に応じる、という考えである。中国はいま共産党大会を控え、習近平体制の強化が図られるまでは動けない。北朝鮮に対してはかつてほどの同盟関係は持っておらず、むしろ潜在敵国とまで言い始めており、経済面でのアメリカの圧力を回避するために北朝鮮への攻撃に同意することもありうる。ロシアは北朝鮮の労働力をあてにしており、関与を強めている。ウクライナ侵攻による制裁以降経済が低迷しているため、制裁解除のカードとして使う思惑もある。韓国は、文在寅政権の対北朝鮮対話路線が目立つ。同じ民族であり、崩壊すれば韓国も大変なので当然の対応である。歴史的にも大国の顔色をうかがってきただけに、日本よりしたたかだ。日本は、(2)のシナリオになった場合、国内でも核武装論が強まる可能性がある。ミサイル防衛システムで撃ち落とせるか、という問題もある。アメリカの国力が落ちてもついていくのか、選択を迫られることになる。
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