平成28年12月15日(木) |
日露首脳会談へ望む 〜〜経済協力・北方領土・平和条約〜〜 |
名越健郎先生
拓殖大学海外事情研究所教授、
元時事通信モスクワ支局長・外信部長
概要
これまでの日露交渉では、1956年の交渉で日ソ共同宣言が出され、そこでは、日ソ平和条約が締結された後にソ連が歯舞群島と色丹島を引き渡すという前提で、改めて交渉を行うという合意がなされた。安倍晋三総理としては、その父上・安倍晋太郎氏が外相の時、二島の先行返還論を唱えていたので、それに従い、二島先行返還を期待して交渉に入ったと思われる。
9月2〜3日のウラジオストック会談のあと、安倍総理は「平和条約の手応えを強く感じた」とし、プーチンも「双方が負けたとみなさないような解決策が必要だが、それは容易ではない」と応じた。次いでペルーのリマでの会談後は、プーチンは「ロシアには日本との領土問題は全くない。問題があると言っているのは日本だけだ。日米同盟という枠があるのに、日露で果して、平和条約の合意ができるのか?」と、ここ1〜2ヵ月でプーチンの言動が変わってきたのが、気になる。
プーチンはなぜ変わったのか? それは、ロシアの国防相と外相が連名で一島でも領土返還には反対とする書簡を大統領に送付しているという国内からの反対。そして、クリミア併合についてオバマ・クリントン路線が強硬でその経済封鎖に苦しめられてきたが、ロシアに友好的なトランプがアメリカ大統領に当選したことにより、日本に対する関心が相対的に低下した。つまり、ロシア側には当初、日本を媒介としてアメリカとの関係を改善したいという思惑があったが、もはや、その必要がなくなったと見ることができる。日露会談の結果は上記分析通りであった。