平成28年5月30日(水) |
生涯健康と高齢者医療のあり方 |
岡本悦司先生
福知山公立大学教授・医師、
前国立保健医療科学院主任研究官
概要
2025年には、高齢者人口が約3500万人に達し、医療費も莫大な額になるとみられる。年齢が上がるほど医療費や介護費は嵩むからだ。高齢者医療の歴史は、1973年に老人医療が無料化されたところから始まった。その結果、国民健康保険財政は圧迫され、病院も採算を取ろうとして不必要な点滴を行うなどしていた。その後、1983年に老人保健制度ができ、給付は市町村が行うようになった。1990年には、老人病院に定額制度が導入されたが、治療より介護を必要とする層まで病院に受け入れざるをえなくなり、病院は採算が悪化、一方で適切なリハビリを受けられず病状が悪化するケースが社会問題化した。
英国や北欧では、社会保障のすべてを税金で賄っている。しかし、税金は恣意的な課税が出来ず、予算の枠を超えることができない。これに対し日本やドイツは保険料で賄っている。来年はこのくらいの費用がかかると予測出来れば、保険料を引き上げれば済む。日本が保険料方式になったのは、細川内閣で計画されていた国民福祉税構想が頓挫し、40歳以上から介護保険料を徴収するようになってからである。その後15年で、介護にかかる費用は3倍になり、日本の財政を圧迫しているが、介護サービス産業の成長と言うメリットもあった。
一方、後期高齢者医療制度は、従来の制度が国に保険料を払って市町村から給付を受けるいびつな制度であったが、これを独立の後期高齢者医療制度に加入することで一元化したものであったが、保険料の本人負担があることに批判もあった。現在、高齢者が日本の資産の3分の2を保有していると言われており、応分負担の観点から、税方式を見直してはどうかという声もある。