平成28年3月29日(火) |
ウクライナ危機に始まる米露対立と日本の対応 |
馬渕睦夫先生
元ウクライナ・キューバ・モルドバ大使
概要
ウクライナ危機は、実は、ネオコンによるプーチン潰しにあったと考えている。クリミア侵攻は、もちろん国際法上問題があるが、クリミアはもともとロシア人が血を流して手に入れた土地で、フルシチョフ時代に行政区分として便宜上ウクライナに組み入れた地域である。マレーシア機撃墜の真犯人はロシアでない、ということも分かっている(オランダ政府の調査)。ネオコンは、グローバリズム=社会主義者=リベラリストである。これに対するのが、ナショナリズムであって、プーチンの立ち位置はこちらである。ネオコンは、プーチンを潰して、ロシアをグローバリズム化したい(国際金融資本や多国籍企業による支配)。これは、アメリカの国益に資する。
プーチン大統領は、ロシアを天然資源輸出型国家から、ハイテク産業国家へ転換することにより、国民経済とグローバル市場化とを両立させようと考えている。すなわちグローバリズムをロシアの伝統的価値観に合うように土着化していきたいのだ。この「グローバリズムの土着化」は日本が明治維新以来行ってきたこと。ハイテク技術も、日本の得意とするところ。そこでプーチンは日本の協力を大いに期待している。
今年プーチン訪日時が、北方領土返還実現のチャンスだ。ロシアのハイテク産業国家への転換のため日本の官民による協力することと引き換えに四島返還を取引すべきである(2島+αではだめ)。ただ金だけ出して、四島返還を求めるのはよくないやり方である。アメリカとしてもこれ以上ロシアを追い込むことは望んでいない。核戦争の危険が高まるからだ。