平成27年4月23日(木)
 4月7日に閣議決定された『外交青書』の主要点の解説
杉浦正俊先生

杉浦正俊先生

外務省総合外交政策局政策企画室長



概要

 平成27年版外交青書は、昨年1年間を記述対象期間としている。今年は第一章の1として「戦後70年──平和国家としての歩み」という項を特別に追加して、詳しく説明。また、写真を大くし、コラムなどもたくさん入れて、分かりやすい青書をめざした。
 最近「積極的平和主義」という言葉だけが独り歩きしている。これだけ切り取ると、自衛隊派遣などに重点があるかのようであるが、そうではない。「国際協調主義に基づく積極的平和主義」なのであって、平和に積極的に貢献する姿をイメージしており、このことは国際社会に認識されてきている。この70年間の平和国家としての歩みは、日本国民の中に深く浸透しており、今後も決して変わることはない。各国と協力して世界の平和と安定及び繁栄にこれまで以上に積極的に貢献していく。
 わが国の外交の3本柱は、(1)日米同盟の強化、(2)近隣諸国との関係強化、(3)経済外交である。(1)は日本外交の基軸である。アジア太平洋重視政策(リバランス)をとるオバマ政権と連携し、今後も、日米同盟をあらゆる分野で強化していく。普天間飛行場の移設を始め、在日米軍再編を現行の日米合意に従って進め、沖縄を始めとする地元の負担軽減に取り組む。(2)は環境を安定化する上での基礎である。日中関係は最も重要な二国間関係の1つである。11 月に北京で行われたアジア太平洋経済協力(APEC)会議での首脳・外相会談では、「戦略的互恵関係」の原点に立ち戻り、関係を改善させていく第一歩となった。韓国は、最も重要な隣国である。今年は日韓の国交正常化50周年に当たる。引き続き、様々なレベルで意思疎通を積み重ね、未来志向で重層的な日韓関係を双方の努力により構築すべく、粘り強く取り組む。(3)も最重要の施策の一つである。開放的でルールに基づいた国際経済システムの拡大が、世界経済の発展と日本の経済的繁栄にとって極めて重要である。日本は、成長戦略の柱の一つとして、二国間の交渉のみならず、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定を始めとする各種経済連携協定の交渉にも同時並行的に取り組んでいる。
 安倍総理大臣と岸田外務大臣は積極的な外国訪問を行っている。この結果、国際社会における日本の存在感が着実に高まり、安倍総理大臣と各国首脳、岸田外務大臣と各国外相との個人的協力関係も深まっている。安倍政権の発足以来、安倍総理大臣は、54か国・地域を訪問し、252回首脳会談を行った。岸田外務大臣は35か国・地域を訪問し、178 回外相会談を行っている(2015 年1月31日時点)。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国における対日世論調査では、アジアの発展に対する日本の積極的役割を92%が評価し、日本の国際貢献の特に経済的側面への高い評価と期待が示された。英国BBC は毎年「各国が世界に与える影響」に関する国際世論調査を実施しており、日本は調査結果の中で、例年世界に肯定的な影響を与えている国の上位に位置している。

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