平成26年9月29日(月)

発症率が世界で一番高い日本の認知症を予防しよう!

中谷一泰先生

中谷一泰先生

昭和大学名誉教授



概要

日本は世界一の長寿国になったものの、反面として認知症の発症率も世界一で、当初は認知症の原因が分かりませんでしたが、近年、その原因も解明されつつありますので、認知症研究の権威でいらっしゃる中谷一泰先生に御講話をいただきました。
 その要旨は、まず、認知症とは「記憶力や判断力が年相応以上に低下し、日常生活に支障が出る症状をいう」と定義され、日本では65歳以上が多い高齢化社会だが、それにしてもアメリカの2倍、東アジア人の3倍に達しており、このまま行くと、2030年には、認知症患者が700万人〜900万人となり、入院・治療に国は30兆円以上を必要とする勘定だ。認知症の原因としては、アルツハイマー病が60〜70%、パーキンソン病が10%、脳血管性が約20%だが、私どもの研究により、パーキンソン病はαシヌクレインなる物質以上によるものであり、アルツハイマー病はアミロイドベータなる物質が脳内の神経細胞を死滅させることによることが分かって来た。その結果、認知症の治療法も進んできているが、根本的治療薬はまだない。それでも、いくつかの治療薬・予防薬が開発され、現在、症状を一時的に改善し、進行を遅らせることができるようになった。しかし、それには、認知症発症後、できるだけ、早期の治療に効果がみられるので、軽度認知症のうちに、専門医を訪ねてほしい。
 そして、アルツハイマー病の治療薬、パーキンソン病の予防薬、脳血管性認知症の治療薬をそれぞれ具体的に挙げられた。又、認知症にかからないようにする予防法としては、生活習慣を改善することも必要だ。それには、〇煙草をやめる。〇肥満にならないようにする。〇身体的運動を活発にして動脈硬化を防ぎ、血の巡りを良くして、脳の縮みを防ぐ。〇精神的活動を活発にし、人と接する機会を増やし、会話を心がけ、計画を立てて新しいことを覚えて、脳を鍛える。〇野菜・果物・魚を多く食べ、肉食を少なめにする。特に、煙草、肥満は、認知症を発症・進行させるばかりでなく、心筋梗塞、脳卒中、がんを発症させる率が高い。私ども研究者も熱心に研究しており、認知症の発症原因も次第に分かり、認知症を治せる一歩手前まできているが、国民の皆さんには、以上述べたことに留意していただきたい、と結ばれました。

(清原記)

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