平成26年6月24日(火) |
アメリカの成長戦略の分析・解説! |
橋本久義先生
政策研究大学院大学名誉教授、
元工業技術院総括研究開発官
概要
お集まりの皆様は、アベノミクスを如何にして成功させるかに強いご関心をお持ちですが、私は経済産業省出身なので、その面から申し上げると、昨年から、国は中小企業の活性化こそ成長の鍵と考え、中小企業1万社を対象に、試作開発補助金として1千万円ずつ提供してきており、今年は1千5百万円に増額した。それがこの9月ごろから効果を現すだろう。
これらの施策は、停滞時のアメリカを活性化させたシリコンバレー方式を採用するものといえる。そこは、カリフォルニア州のサンフランシスコ湾の南西部にあるスタンフォード大学を中心とする11市街地一体のことで、「サンタクララバレー」と呼称されており、シリコンバレーという地名があるわけではない。アメリカ東海岸にはすでにボストンといった産業都市があり、ボストン大学が有名であるが、スタンフォード大学はこれに対抗するため、その裏手にスタンフォード工業団地を造り、特に1960年代から、シリコンを主原料とするIC(集積回路)半導体を研究・生産するマイクロエレクトロニクス関連企業が、一挙に進出してきたのが、「シリコンバレー」の名称を用いた最初だといわれる。
こうして、シリコンバレーには、次第に各種のIT企業が集まってきて、アメリカ繁栄の基礎を創ったわけだ。特に、スタンフォード大学は、そこで学んだ発想豊かな若者を育てる方針を立て、また、それを応援する資産家を求め、そうした若者を、事業家と育て上げるという産学協同を大学の精神・方針とした。例えば、大学で音波測定用の音声発信機を研究していたヒューレットとパッカードを支援して成功させ、これはディズニー製作の「ファンタジア」に採用され、この2人は大資産家になった。その他、「シリコングラフィックス」社を創ったジム・クラークや、「ヤフー」を創ったジェリー・ヤンなど、沢山の人材が育っている。私は、日本にこの方式を取り入れたい、と熱弁を振われ、一同、聞きほれました。