平成26年5月28日(水) |
海上保安庁の業務について |
中村明先生
海上保安庁政策評価広報室長
概要
海上保安庁は、戦時中に日本周辺海域に敷設された機雷や沈船、破壊された航路標識、密輸・密航等の海上犯罪の横行などに対処するため、海上における治安の維持と海上交通の安全の確保を一元的に担当する機関として、昭和23年5月に創設された。
その後、海上保安庁の任務は時代の変遷とともに、国境・領海の警備、排他的経済水域の監視・取締り、不審船、海上でのテロ対策、東南アジアやソマリア周辺海域における海賊対処など拡大してきている。
中村明海上保安庁政策評価広報室長は講演の中でこのように述べられ、海上保安庁が領海約43万平方kmに加え排他的経済水域約405万平方kmという、我が国の領土(約38万平方km)の12倍に及ぶ広大な海域を管轄し監視・しょう戒に当たっているほか、更に遠くではソマリア沖の海域において海上自衛隊と協力しつつ船舶の安全な通航を妨害する海賊対策に当たっていることなど、平成25年度における海上保安業務の実例を挙げて説明された。
また、平成24年9月11日の海上保安庁による尖閣三島の取得・保有以降、中国公船が常態的に尖閣諸島周辺海域を徘徊している問題について、中国公船だけでも領海への侵入事案が、平成26年5月27日現在で83件、延べ280隻に及んでおり、巡視船による退去要求、進路規制を行い、領海外に退去させていること、また、尖閣諸島の警備は全国からの巡視船の応援派遣で対応している現状にあるところ、早急に専従体制に移行することを喫緊の課題として取り組み、大型巡視船の建造を急いでいることなどを紹介された。
なお、会員の中から、海上保安庁の年間予算を質問したところ、その額が広大な海域、広範な任務に対して余りにも少ないことに一同驚き、政府や国会が海上保安庁に対し、更に支援を行う必要があることを痛感していた。