平成25年10月23日(水)

アベノミクスと高橋是清財政!

松元崇先生

松元崇先生

内閣府事務次官、
元内閣府政策統括官・内閣府大臣官房長

概要

安倍総理の唱える「アベノミクス」なる金融緩和政策については、効果がないとかハイパーインフレになるとか批判もあるが、過去に内外で成功例がある。例を挙げよう。
 まず、1923年(大正12年)に関東大震災が起こり、日本のGDPの3分の1が吹っ飛び、日銀も救済融資漬となった。危機感をもった井上準之助蔵相は金融引き締めに転じ金本位制を採ったが、円高・デフレに陥った。後を継いだ高橋是清蔵相は、日銀と連携して当時1億円程度だった貨幣流通量を10億円にした結果、インフレ率は2%に留まり、実質成長率は7.2%になった。また、戦後の池田勇人総理は、下村治(大蔵官僚・経済学者)の意見を入れ、金融緩和策を採り、高度成長を実現した。アメリカでもFRBのバーナンキ議長が、2008年のリーマンショック後、このままだと大不況になりかねないとして、毎年6000億ドル(60兆円)程度の金融緩和を行い、アメリカの景気が徐々に回復していったことも一つの例だ。
 しかし、「アベノミクス」は始まってまだ10ヵ月。これからが肝心だ。デフレ脱却といっても、ただ単に、物価が上昇するだけでは国民の負担が増えるだけだ。給料が上がってこそ初めて経済に好循環が生ずる。そのためには、まず政府が動いて民間の活力を爆発させてこそ大きな成長力となる。これまでの15年間は不景気で、ベースアップがないのが当たり前になってしまった。しかも、正規雇用が減り、非正規が多くなったので、平均給与額は低下している。平成の初めには、20歳後半の男子で、非正規が全体の5%程度だったのが、現在では19%に増えている。収入が少ないので結婚もできない。したがって子供も生まれないという結果となっている。いま、安倍政権は、こうした事態を是正すべく、各種政策を駆使して経済成長を進めていることを御理解いただきたい、との趣旨を述べられ、その後の意見交換も盛んだった。

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