令和6年9月18日(水) |
自民党総裁選挙の裏事情も解説! |
田村重信先生
政治評論家、元自由民主党本部職員・政務調査会調査役・審議後独立
概要
自民党総裁は、任期3年、9月末に任期満了をするため、そのたびに総裁選挙が実施される。総裁選挙の立候補には国会議員20人の推薦人を必要とする。国会議員367人の1人1票と、自民党員・党友110万人余りの票を得票数順に367票に割り振った合計734票によって争われる。1回で過半数を取った者がいれば、即当選。いなければ、上位2人で決選投票を行う。決選投票は、国会議員367人の1人1票と、47都道府県の党員・党友票を、決選投票の進んだ者のどちらの票が多かったかでその都道府県の1票を獲得する。合計414票で争われる。
自民党総裁選に党員が参加するようになったのは、昭和53年11月から。当時、ロッキード事件の影響で自民党の党勢が下落しており、党員を増やすために上記のシステムを考え、私もシステム作りに事務局員として参加した。そのお蔭で自民党員は4倍に増え、初回は現職の福田赳夫総裁が敗れるという波瀾もあった。推薦人の数は何度か変遷しているが、投票のシステムはほぼ変わっていない。
これまでは、派閥の中で頭角を現してから、総裁選挙に立候補するのが当たり前だった。そうでなければ、20人もの推薦人は集まらないからだ。それが、いわゆる裏金問題により、ほとんどの派閥が解散に追い込まれた。よって、派閥の縛りがなくなり、同じ派閥から複数の候補者が出るなどして、今回は9名の候補者が出馬することとなった。
新聞・テレビ各社の世論調査を見ると、当初は石破茂候補と小泉進次郎候補の一騎打ちと見られていたところ、高市早苗候補が急浮上している。党員票がカギを握っているとみられる。3人のうち誰が総裁になり、やがて総理大臣になっても、年内には衆議院解散が行われる。岸田前総裁は、解散直後の衆議院総選挙に勝利し、3年という長期政権の足場を築いた。
誰が総裁に当選したとしても、新総裁には、自民党結党の精神に立ち返るべきである。結党精神には、「現行憲法の自主的改正。集団安全保障の下、国力と国情に相応した自衛軍備を整え、駐留外国軍隊の撤退に備える」とある。小泉政権下と、野党時代に作られた自民党の憲法改正案では、「自衛軍」を明記していたが、安倍総裁は、2018年、「9条の1項・2項は変えず、9条の2に自衛隊を明記する」と事実上後退させてしまった。私はこれをおかしいと思う。外国軍隊が駐留していることを問題視しないことは、占領下のままでよいということになる。平和安全法制の整備と集団的自衛権行使の解釈変更で良しとしたのかもしれないが、米軍が日本のために動いてくれるとは限らない。自衛隊違憲論の解消のためだけに自衛隊を明記するのではなく、明確に「国防軍を保持する」としてもらいたい。
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