令和5年7月20日(木) |
ロシアのウクライナ侵攻が我が国の防衛に与える影響! |
田浦正人先生
元陸所自衛隊北部方面総監部幕僚長
第七師団長 北部方面総監、陸将
概要
ロシアには、クリミア侵攻の時に戦わずして勝ったという成功体験があり、それを引きずったがための失敗をいくつか犯している。例えば、訓練用の反応装甲をそのままつけて戦場に出ていたり、戦車隊というにはあまりに少ない台数で構成されていたり、戦車乗りの私から見れば明らかに失敗と分かるような例が見受けられる。サイバー攻撃も今回は失敗しているが、これには西側諸国の協力もあるようだ。
一方、ウクライナ側にも領土奪還のために西欧諸国から戦車が供与されるようだが、生産国がばらばらであり、補給の仕方も、連絡の仕方も違うし、戦車を乗りこなすだけの訓練の時間も足りないというところに私は懸念を抱いている。
戦車を始めとした重火器戦力の重要性は、私が北部方面総監の時に共同訓練を行った米軍の幹部も口にしている。にもかかわらず、防衛大綱が出るたびに陸上自衛隊の戦車の数は減らされ続けている。宇宙対策やサイバー攻撃対策も確かに重要だが、重火器戦力を削ってしまっては、危機に対応できない。敵は三方向から来るのが定石だ。中国はウクライナ侵攻でロシアに貸しを作り、国連が何もできないことをよく見ている。台湾、尖閣諸島に中国軍が上陸してきた場合、呼応してロシアが国後から上陸してくることは十分に考える。平時では想定できないような危機がすぐそこに迫っていることを認識していただきたい。
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●ご案内状(pdf)